広告運用

広告代理店を変えるとき、何を失うか

公開日:2026年9月23日

CONCLUSION

代理店を変える前に、広告アカウントの所有者を確認する。代理店名義なら、除外キーワード・検索語句の履歴・自動入札の学習がすべて消える。自社名義なら権限の付け替えだけで済む。所有者が代理店なら、変更ではなく所有権の移管から交渉する。

成果が出ないので代理店を変えたい、という相談をよくいただきます。

判断としては妥当な場合が多いです。ただし切り替え方を間違えると、成果はさらに落ちます。 しかも落ちた原因が新しい代理店のせいに見えるため、また変えることになります。

何が消えるのか

広告アカウントには、出稿の設定だけでなく、それまでの運用の蓄積が入っています。

  • 除外キーワードの一覧 — 何年もかけて「この語では出さない」と積み上げたもの
  • 検索語句の履歴 — 実際に検索された語の記録。次に何を除外すべきかの 材料
  • 自動入札の学習 — コンバージョンの実績から機械が学習した入札の判断
  • 広告の審査履歴 — 過去に承認された広告文の実績

アカウントごと変わると、これが全部ゼロに戻ります。

とくに自動入札の学習は、作り直すと再び安定するまで成果が落ちます。

学習が安定したかどうかは、期間ではなくクリック数で判断してください。 1か月待てばよい、というものではありません。予算が小さければ1か月では足りず、大きければ2週間で済みます。

目安は最低1,000クリックです。

学習の目安に届くまでの出稿費
必要なクリック数最低ライン1,000クリック
クリック単価仮に500円
それまでに消化する出稿費500,000円

この額を使い切るまでは、成果が悪くても判断を保留してください。途中で設定を変えると、学習がまたやり直しになります。

つまり、アカウントを作り直すと、成果が安定するまでに出稿費50万円ぶんの助走が要ります。 月の予算が25万円なら2か月です。その間、同じ予算でも獲得件数は落ちます。

分かれ目は、アカウントの所有者

広告アカウントが誰の名義か

代理店の名義

  • 契約終了と同時にアカウントを失う
  • 除外キーワード・検索語句の履歴が消える
  • 自動入札の学習がゼロに戻る
  • 新しい代理店はゼロから作り直す
  • 比較検討の自由も実質失われる

自社の名義

  • アカウントはそのまま残る
  • 代理店の権限を外して、新しい代理店を追加するだけ
  • 学習も履歴も引き継がれる
  • 切り替え当日から同じ水準で動く
  • 複数社に見積もりを取りやすい

自社名義でも、代理店が独自に作った管理用アカウントの配下にある場合があります。「解約後もこのアカウントを使い続けられますか」と一文で確認してください。

これから契約する場合は、必ず自社名義で作ってください。 「当社で用意します」と言われたら、その意味を確認する価値があります。

すでに代理店名義の場合

変更の前に、所有権の移管を交渉してください。

Google広告には、アカウントの管理権限を別の管理アカウントへ移す仕組みがあります。技術的には難しくありません。応じるかどうかは商慣習の問題です。

交渉が通らない場合、選択肢は2つです。

  • アカウントを作り直す前提で切り替える — 落ち込む期間を見込んでおく
  • いまの代理店を続けながら、並行して自社名義のアカウントを立ち上げる — 予算は分かれますが、落ち込みは避けられます

どちらを選ぶにしても、移管に応じない代理店とは、いずれ同じ問題が起きます。 次の契約では所有者を必ず自社にしてください。

引き継ぎでもらうもの

アカウントを引き継げない場合でも、情報だけはもらえます。 契約終了前に依頼してください。

解約を伝える前に依頼する
  1. 1
    除外キーワードの一覧最も価値がある。これがあれば、新しいアカウントでも同じ無駄を繰り返さずに済む
  2. 2
    検索語句レポート(できるだけ長期間)実際に検索された語。何が効いて何が効かなかったかの元データ
  3. 3
    配信していた広告文の一覧審査を通った実績のある文面。作り直しの手間が減る
  4. 4
    コンバージョン設定の内容何をコンバージョンとして数えていたか。ここがずれると数字が比較できなくなる
  5. 5
    過去12か月の実績データ月別の費用・クリック・コンバージョン。新旧の比較に必要

解約を伝えたあとでは、対応が鈍くなることがあります。 順番として、依頼を先にしてください。

変えても解決しない場合

代理店を変えれば直る問題と、変えても直らない問題があります。

変えて直る可能性があるもの

  • 除外キーワードが放置されている
  • 検索語句レポートを見ていない
  • 報告が管理画面の数字の転記だけ
  • 提案が「予算を増やしましょう」しかない

変えても直らないもの

後者は事務所側の問題です。代理店を変えると、しばらくは新鮮に見えて数字が動いたように感じます。 しかし半年後には同じ状態に戻ります。

変える前に、受任単価を出してください。受任単価が悪いのか、受任率が悪いのかで、直す場所が変わります。

判断の基準

次のどれかに当てはまるなら、変更を検討する段階です。

  • 検索語句レポートと除外キーワードの一覧を求めて、出てこない
  • 「来月何を変えますか」に対して、具体的な答えが返ってこない
  • 受任件数が1年間変わらない
  • アカウントが代理店名義で、移管を断られた

最後の一つは、成果に関係なく理由になります。運用の蓄積が自社に残らない契約は、長く続けるほど不利になります。

なお、受任件数については段階があります。月次報告の記事では6か月横ばいで運用の中身を見直すと書きました。中身を見直しても1年変わらなければ、代理店を変える段階です。いきなり変えるのではなく、まず今の代理店に中身を変えてもらう。それでも動かなければ変える、という順です。

法律事務所の場合

弁護士の業務広告には、2026年7月1日から広告業者との契約書と入出金記録を3年間保存する義務があります。代理店を変える場合も、前の代理店との契約書類は捨てないでください。詳しくは業務広告規程の記事に整理しました。

また、成果報酬型への切り替えを提案された場合は、料金体系が規程に触れないかを先に確認してください。別の記事にまとめています。

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