広告運用

成果報酬型の広告運用は、弁護士が使ってよいのか

公開日:2026年9月21日

CONCLUSION

件数連動・弁護士報酬額連動の支払いは、日弁連の指針が紹介の対価と評価しうる類型として挙げている。分かれ目は運用会社が問い合わせに介在するかどうか。自事務所サイトへ誘導するだけなら整理の余地があるが、運用会社が一次受付をする形は周旋の疑いが濃い。採算の話はその次。

「成果が出なければ費用はいただきません」という提案を受けたことがある方は多いと思います。

初期費用がなく、結果が出たときだけ払う。事務所側にリスクがないように見えます。実際、広告を始める前の事務所にとっては魅力的な条件です。

ただし、採算を計算する前に確認すべきことがあります。その料金体系が、弁護士職務基本規程に触れないかです。

結論から書くと、件数に応じて支払う形は、日弁連の指針が「紹介の対価」と評価しうる類型として名指ししています。 まずここから整理します。

日弁連の指針が、判断の枠組みを示している

日弁連は2018年に「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」を出しています。ポータルサイトへの掲載を念頭に置いた指針ですが、支払いの決まり方をどう評価するかという考え方が明文で示されており、成果報酬型の広告運用を考えるうえでも出発点になります。

この指針は、事業者が弁護士から受け取る金銭について、次の2つの場合に「報酬を得る目的がある、または疑うに足りる相当な理由がある」と認められるとしています(第3項(3)ア(ウ))。

指針が名指ししている算定方法

報酬目的が疑われる

  • 紹介を受けた事件数に応じて算定される場合
  • 紹介を受けた事件の相談料・着手金・報酬金などの額に応じて算定される場合

対価にとどまりうる

  • 登録・掲載の期間や、要するスペース・容量に従って、客観的かつ定額的に決まる場合

ただし定額であれば必ず適法という趣旨ではありません。指針は、宣伝広告の内容や契約内容から実質的に判断するとしています。

さらに指針は、周旋に当たらないと整理できる場合であっても、契約内容から依頼者の紹介を受けたことに対する対価を支払うものと認められるときは、弁護士職務基本規程第13条第1項に違反するおそれがあるとしています(第4項(2))。

名称は関係ありません。 「広告費」「運用費」「成果報酬」のどれであっても、算定方法が件数連動なら、実質で評価されます。

分かれ目は「介在しているか」

ここで疑問が出ます。広告代理店は、依頼者を紹介しているのか。

上の指針が直接の対象としているのは、弁護士情報を掲載して市民に見せるポータルサイトの事業者です。広告代理店はそれとは違います。検索広告を出稿し、自事務所のサイトに人を送る。相談者は事務所に直接連絡する。この形なら、代理店は当事者の間に介在していません。

介在していないなら「紹介」ではない、という整理は成り立ちえます。問題は、実際の成果報酬型の運用が、しばしばそうなっていないことです。

同じ「成果報酬型」でも、構造がまったく違う

運用会社が介在する形

  • 代理店が自社ドメインでLPを持っている
  • 記載されている電話番号が代理店の転送番号
  • 代理店が一次受付をして、事務所に取り次ぐ
  • 相談内容を聞き取ってから事務所を選んで渡す

介在しない形

  • 広告の遷移先が自事務所のサイト
  • 電話番号は事務所の番号
  • 相談者は事務所に直接連絡する
  • 代理店は相談内容に触れない

左の形は、指針が周旋の例として挙げている「閲覧者からの相談等の内容を一旦受けて、掲載弁護士の選定の用に供する」構造に近づきます。

左の形で件数課金を受けているなら、料金体系より先に構造を見直す必要があります。

受任額に連動する形は、さらに別の条文に触れる

最も避けるべきは、受任した事件の着手金や報酬金の額に応じて支払う形です。

指針が名指ししているだけでなく、弁護士職務基本規程第12条は弁護士報酬の分配を禁じています。受任額に連動する支払いは、報酬の分配と評価される可能性が直接あります。

「売上の◯%をお支払いください」という提案を受けた場合、その場で断って差し支えありません。

当社は判断できません

ここまで指針と条文の構造を整理してきましたが、当社は法律事務所ではないため、個別の契約が規程に違反するかどうかを判断することはできません。

上に書いたのは、どこに論点があるかの整理です。契約を結ぶ前に、契約書の写しを持って所属弁護士会に確認してください。 多くの弁護士会が非弁提携に関する相談窓口を設けています。

以下は、規程の問題をクリアした場合に、なお残る採算の話です。

「成果」はほぼ必ず問い合わせ件数

成果報酬型の広告運用で成果として数えられるのは、ほとんどの場合、次のどれかです。

  • 電話がかかってきた件数
  • フォームから送信があった件数
  • 資料請求があった件数

受任件数ではありません。 理由は単純で、受任したかどうかを運用会社は知り得ないからです。事務所が報告しない限り、外からは分かりません。

つまり成果報酬型は、構造上ほぼ必ず「問い合わせ課金」になります。ここが出発点です。

何が起きるか

問い合わせ課金では、運用側は件数を増やすほど売上が上がります。 そして、受任に至らない相談が何件あっても損をしません。

この状態で運用が最適化されると、次の方向に進みます。

  • 検索語を広く取る — 関連の薄い語でも表示させて、クリックを増やす
  • 無料相談を前面に出す — 費用感が合わない層も呼び込む
  • とりあえず電話させる導線を作る — 検討が進んでいない段階でも押す

どれも件数は増えます。そして、どれも受任率を下げます。

これは運用会社が不誠実だという話ではありません。報酬の決まり方がそうなっている以上、まじめに最適化するほどこの方向に進みます。広告の目標を問い合わせ数に置いてはいけないのと同じ構造が、契約の側に埋め込まれているということです。

実質いくら払っているか

成果報酬の単価は、分野によって大きく変わります。目安は次のとおりです。

分野 問い合わせ1件あたり
離婚 約1.5万円
相続 約2万円
債務整理 約6万円
交通事故 約10万円

交通事故は事務所によって開きが大きく、この幅に収まらないこともあります。

この単価は、おおむねクリック単価に連動します。 クリック単価は相続を1とすると債務整理が2倍、交通事故が8倍でした。ただし比率は一致しません。分野ごとにクリックから問い合わせに至る率が違うためです。交通事故はクリック単価が8倍でも問い合わせ単価は5倍にとどまり、債務整理はクリック単価が2倍でも問い合わせ単価は3倍になります。

一見すると安く見えます。しかし、事務所が本当に見るべきは受任単価です。

問い合わせ課金で月20件を獲得した場合
成果報酬20,000円 × 20件400,000円
うち受任受任率10%2件
受任1件あたりの広告費200,000円

平均受任額が50万円の分野なら、受任額の4割です。許容ラインの3割を超えており、損益分岐点に張り付いています。

受任率が半分の5%に落ちれば、受任単価は40万円になります。問い合わせ単価は変わらないのに、採算は崩れます。 判断の基準は受任額に対する割合で見てください。

そして、この受任率を下げる方向に運用が進むのが成果報酬型です。

見えにくいもう一つの損失

受任に至らない18件にも、事務所の時間はかかっています。電話を受け、日程を調整し、場合によっては面談までして、受任に至らない。

この時間は、どの請求書にも出てきません。 成果報酬の明細には「20件」としか書かれません。

アカウントは誰のものか

契約前に必ず確認してほしいことがあります。Google広告のアカウントを、どちらが所有するかです。

成果報酬型では、運用会社のアカウントで配信されることがほとんどです。この場合、契約を終えたときに事務所側に残るものは何もありません。

  • どのキーワードで受任できていたか
  • どの広告文が反応を取っていたか
  • 何を除外してきたか

これらはすべて運用の蓄積です。自事務所のアカウントで運用していれば資産として残り、次の代理店に引き継げます。運用会社のアカウントなら、契約終了と同時にゼロに戻ります。

「アカウントは当社所有になります」と言われた場合、乗り換えの自由も失うことになります。

固定報酬型との比較

報酬の決まり方で、何が変わるか

成果報酬型

  • 成果が出なければ払わない
  • 「成果」はほぼ必ず問い合わせ件数
  • 件数を増やすほど運用側が儲かる
  • アカウントが運用会社所有のことが多い
  • 受任率が下がっても運用側は損をしない

固定報酬型

  • 成果が出なくても払う
  • 成果指標を受任側に置ける
  • 件数と報酬が連動しない
  • 自事務所のアカウントで運用できる
  • 出稿費の内訳が見える

固定報酬型にもリスクはあります。成果が出なくても費用が出ていく点です。だからこそ、判断できるだけの件数が出る予算から始める必要があります。

使ってよい場面

成果報酬型が常に不適切というわけではありません。次の条件がそろうなら、選択肢になります。

  • 成果の定義を、面談実施または受任に寄せられる — 交渉の余地があるか確認してください
  • 広告アカウントが自事務所の所有である
  • 獲得した問い合わせの記録が、事務所側に渡される — 検索語、流入ページ、日時

この3つを満たす契約であれば、実質的には固定報酬型に近い運用になります。逆に、1つでも欠けるなら見送ってください。

現在利用している場合

すぐ解約する必要はありません。まず数字を出してください。

直近3か月について、成果報酬で支払った総額と、そこから実際に受任できた件数。この2つを割れば受任単価が出ます。出し方は受任単価の記事に書きました。

判断の目安はこうです。受任金額(着手金と報酬金の合計)に対して1割が理想、3割までは許容、それを超えたら点検です。3割を超えているなら、契約の形を見直す段階です。

1割は現実には難しい水準です。ただし目標として置いておかないと、3割が基準になり、やがて4割になります。4割は損益分岐点です。

そのうえで、運用会社に成果の定義変更を打診してください。受任ベースへの変更を断られる場合、その理由が答えになります。

契約前に確認する5点

提案を受けたら、この順で確認する
  1. 1
    支払いの算定方法は何に連動するか件数連動か、受任額連動か、定額か。受任額連動なら断る
  2. 2
    広告の遷移先は誰のサイトか自事務所のサイトでないなら、介在の有無を確認する
  3. 3
    掲載される電話番号は誰の番号か転送番号なら、誰が最初に出るのかまで確認する
  4. 4
    運用会社が相談内容に触れるか一次受付や振り分けをするなら、構造から見直す
  5. 5
    契約書を持って弁護士会に確認する1〜4で問題がなさそうでも、最終判断はここ

1から4のどこかで引っかかるなら、採算を計算する前にその契約は見送ってください。採算が合う違法な契約より、採算が合わない適法な契約のほうがましです。

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