広告運用

受任単価の出し方と、見るべき基準

公開日:2026年9月21日

CONCLUSION

受任単価は「広告費 ÷ 受任件数」で出す。分子には出稿費だけでなく代理店手数料と制作費を含め、分母は広告が出た月ではなく受任した月で数える。出し方を一度決めたら変えない。比較できることのほうが、精密であることより重要。

前回、広告の目標は問い合わせ数ではなく受任だと書きました。では受任単価はどう出すのか。

式そのものは単純です。広告費 ÷ 受任件数。それだけです。

ところが、この式を実際の数字で埋めようとすると、決めなければならないことが次々に出てきます。そして決め方によって、答えは平気で3倍変わります。

分子:広告費に何を含めるか

広告の管理画面に出ている出稿費だけを使うと、受任単価は実態より安く出ます。実際には次の費用も、その受任を得るために払っています。

  • 代理店の運用手数料 — 出稿費の20%前後が相場です
  • ランディングページの制作費 — 一度きりの支出なので、期間で割って乗せます
  • ポータルサイトの掲載料 — 別経路として分けるなら、そちらで独立して計算します

このうち、制作費をどう配分するかは決めの問題です。60万円のページを作ったとして、12か月で割るのか、24か月で割るのかに正解はありません。決めて、そのあと変えないことのほうが大事です。

含めるか迷ったときの基準は一つです。その広告を止めたら、その費用も止まるか。 止まるなら含めます。止まらないなら含めません。

分子に積む費用の例(月額)
広告の出稿費管理画面の金額300,000円
代理店の運用手数料出稿費の20%60,000円
ランディングページ制作費600,000円 ÷ 12か月50,000円
受任単価の分子410,000円

出稿費だけで見ると30万円ですが、実際には41万円かかっています。この差がそのまま受任単価のずれになります。

分母:いつの受任を数えるか

ここが一番ずれます。

広告費は今月出ていきます。しかし問い合わせから受任までには時間がかかります。今月の広告費で今月の受任件数を割ると、実態からずれた数字が出ます。

ずれの幅は、分野と相談者の状況で大きく変わります。

交通事故や債務整理のように緊急性が高い案件は、問い合わせたその場で受任に至ることもあります。相続や離婚でも、急いでいる相談者なら1週間以内には決まります。

一方、相手方や他の相続人とまだ何も話していない段階の相談は違います。この場合、まずご自身で話してみてくださいという助言を挟むことになるため、受任は1か月以上先になります。

つまり、同じ分野でも1日から1か月以上まで開きます。 月をまたぐ案件が一定割合あることを前提に数えてください。

対処は二つあります。

一つは、受任した案件がどの月の広告から来たかを紐づける方法です。正確ですが、記録の手間がかかります。

もう一つは、3か月の移動平均で見る方法です。ずれが平均化されるので、月単位のブレに振り回されずに済みます。多くの事務所にはこちらをお勧めします。 精度より、毎月続けられることのほうが重要だからです。

経路が分からない問い合わせをどう扱うか

広告経由かどうかが分からない問い合わせは、必ず出ます。とくに電話です。電話をかけてきた相談者が、その番号をどこで見たかは、システムでは分かりません。

聞くしかありません。一次対応で一言、「どちらで当事務所をお知りになりましたか」と確認して記録します。

これを省くと、受任単価は実態より高く出ます。広告経由の受任が、経路不明として分母から漏れるからです。結果として、効いている広告を「効いていない」と誤判定して止めることになります。

なお、経路が最後まで分からなかった案件は、分母に入れず、件数だけ別に記録してください。分からないものを推測で割り振ると、数字が意味を失います。

分野をまたいで平均しない

取扱分野が複数ある事務所で、事務所全体の受任単価を1つ出しても、判断には使えません。

分野によってクリック単価が違うためです。相続のクリック単価を1とすると、債務整理は2倍、交通事故は8倍ほどになります。この差を平均すると、単価の安い分野が全体を引き下げ、高い分野の問題が見えなくなります。

分野ごとに出してください。これは広告費の下限を分野ごとに計算するのと同じ理由です。

出した数字をどう読むか

受任単価そのものは、高いとも安いとも言えません。平均受任額と並べて初めて意味を持ちます。

見るのは、受任1件あたりの広告費が平均受任額の何割にあたるかです。目安は前回の記事に書いたとおり、1〜2割が健全、4割が損益分岐点です。

そのうえで、時系列で追ってください。単月の数字より、3か月前と比べてどうかのほうが判断に使えます。 単月は季節要因と競合の出稿状況で動きます。

管理画面のコンバージョン数は、問い合わせ件数ではない

ここが最も誤解されます。

広告の管理画面でコンバージョンとして設定されているのは、たいてい次の二つです。

  • 電話番号のタップ — スマートフォンで電話番号を押した回数
  • フォーム送信 — 送信後のサンクスページに到達した回数

問題は、どちらも「問い合わせが成立した」ことの証明ではない点です。

電話番号のタップは、かけたことすら意味しません。 押しただけで発信しなかった、すぐ切った、スクロール中に誤って触れた。こうしたものがすべて1件として記録されます。経験的に、タップのうち実際に会話まで至るのは2割程度です。

フォーム送信は、サンクスページに到達しているのでほぼ確実です。 ただし営業目的の送信が紛れ込むため、9割程度と見ておくのが安全です。

そして、件数の内訳は分野によりますが、電話が8割、フォームが2割という形が多くなります。

実際に何倍ずれるか

管理画面に100件のコンバージョンが出ているとします。

管理画面のコンバージョン100件の内訳
電話タップ80件 × 20%16件
フォーム送信20件 × 90%18件
実際の問い合わせ34件

100件が34件になります。 管理画面の問い合わせ単価は、実態のおよそ3分の1に見えているということです。受任単価は、ここからさらに受任率で割るので、もっと離れます。

この状態で「コンバージョン単価が下がった」という報告を受けても、判断には使えません。

対処

電話を、通話時間を条件にした計測に切り替えてください。 Google広告の通話コンバージョン、または通話計測サービスを使うと、一定秒数以上つながった通話だけを1件として数えられます。誤タップと即切りが落ちるので、数字が実態に近づきます。

切り替えが難しい場合は、電話タップのコンバージョンに2割を掛けて読むだけでも、判断の精度は上がります。正確ではありませんが、3倍ずれたまま見るよりはるかにましです。

よくある誤り

受任率が改善したときに、広告のおかげだと考える。 受任率は問い合わせ後の対応で動きます。広告の評価とは分けてください。

計算方法を途中で変える。 変えた月から、過去との比較ができなくなります。変えるなら、過去の分も遡って計算し直してください。

まず何から始めるか

過去のデータが無い事務所は、次の3つの記録を今月から始めてください。これだけで受任単価は出せます。

今月から始める3つの記録
  1. 1
    問い合わせの日付と、知った経路電話は一次対応で「どちらで当事務所をお知りになりましたか」と聞いて残す
  2. 2
    受任に至ったかどうかと、至った日付至らなかった件も件数として残す。対応時間が費用だから
  3. 3
    月ごとの広告費(手数料込み)出稿費だけでなく、代理店手数料と制作費の按分も含める

記録が3か月分たまれば、判断に使える数字になります。それまでは、出た数字を眺めるだけで、動かさないでください。

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