広告運用
広告代理店の月次報告で、最初に確認すべき三つの数字
公開日:2026年9月21日
CONCLUSION
月次報告で見るべきは、受任件数、受任1件あたりの広告費、受任に至らなかった問い合わせ件数の三つ。表示回数・クリック率・コンバージョン単価は運用者の指標で、続けるか止めるかの判断には使えない。この三つが出てこない報告は、出してもらうよう依頼する。
代理店からの月次報告を見て、「悪くはなさそうだが、良いのかどうかも分からない」と感じている方は多いと思います。
原因は報告の質ではありません。並んでいる数字が、運用者が運用を調整するための数字だからです。 事務所が「続けるか、止めるか、増やすか」を判断するための数字ではありません。
これは代理店が意図的に隠しているという話ではありません。広告の管理画面がそう出力するので、そのまま報告書になっているだけです。
報告書によく並ぶ数字と、その限界
| 数字 | 何を表すか | 判断に使えない理由 |
|---|---|---|
| 表示回数 | 広告が何回表示されたか | 増えても減っても、受任とは連動しない |
| クリック率 | 表示のうち何%がクリックされたか | 広告文の出来を測る指標。受任の質は分からない |
| クリック単価 | 1クリックあたりの費用 | 安い分野に寄せれば下がる。下がっても良いとは限らない |
| コンバージョン単価 | 問い合わせ1件あたりの費用 | 惜しい。ただしこれは問い合わせ単価で、受任単価ではない |
とくに最後のコンバージョン単価は、判断に使えそうに見えるので厄介です。問い合わせが増えれば下がります。受任に至らない問い合わせが増えても下がります。
見るべき三つの数字
- 1受任件数広告から何件受任できたか。知っているのは事務所だけなので、代理店に共有する
- 2受任1件あたりの広告費広告費 ÷ 受任件数。平均受任額と並べて、何割にあたるかで読む
- 3受任に至らなかった問い合わせの件数報告書に出てこない。ここに費やした時間も費用
1. 受任件数
まずこれです。広告から何件受任できたか。
「そこまでは追えていません」と言われることがあります。その場合、代理店が悪いというより、事務所側が受任の情報を代理店に渡していないことがほとんどです。受任したかどうかを知っているのは事務所だけだからです。
追えていないなら、追える形にするところから始めます。問い合わせ一覧に「受任したか」の列を足して、月末に代理店へ共有する。それだけで報告の中身が変わります。
2. 受任1件あたりの広告費
広告費 ÷ 受任件数です。出し方は別の記事に書きました。
この数字を、その分野の平均受任額と並べてください。受任額の1〜2割に収まっていれば健全、4割で損益分岐点です。判断の根拠は広告費の記事にまとめています。
3. 受任に至らなかった問い合わせの件数
見落とされがちですが、これが三つ目です。
受任に至らない問い合わせにも、事務所の時間はかかっています。電話を受け、面談日を調整し、場合によっては面談までして、受任に至らない。 この時間は報告書のどこにも出てきません。
月20件の問い合わせで受任4件なら、16件ぶんの対応時間が消えています。この件数が増え続けているなら、問い合わせが増えて喜んでいる場合ではありません。
なお、この16件がすべて無駄というわけではありません。紹介につながることも、後から依頼が来ることもあります。 ただ、そうなった件数を把握していないなら、いまは費用として数えるべきです。
報告を受けるときに聞く質問
報告書に上の三つが無い場合、次の質問をしてください。答え方で、代理店の状態が分かります。
「今月の受任件数は何件でしたか」 数字が出てくるか、「事務所さんのほうで分かりますか」と返ってくるか。後者なら、受任情報の共有を始めます。
「先月より改善したというのは、何と比べてですか」 前月比なのか、前年同月比なのか、目標比なのか。季節性のある分野で前月比だけを見ていると、判断を誤ります。
「今月いちばん効いたキーワードと、いちばん無駄だったキーワードは何ですか」 両方すぐ出てくるなら、中身を見て運用しています。良かった話しか出てこないなら、次の4点を出してもらってください。
- 設定しているキーワードの一覧
- 実際に配信されている広告文
- 検索語句レポート — 相談者が実際に検索した語
- 除外キーワードの一覧
このうち検索語句レポートが最も重要です。設定したキーワードと、実際に検索された語は一致しません。 「相続 弁護士」で出稿していても、実際には無関係な語で表示され、クリックされています。そこを除外していく作業が運用の中身そのものです。除外キーワードの一覧が空に近いなら、運用されていないと考えて差し支えありません。
「来月、何を変えますか」 「引き続き最適化します」で終わるなら、変える予定がないということです。
検索パートナーが混ざっていないか
数字が急に良くなったときに、まず疑うべき設定があります。
Google広告には「検索パートナー」という配信先があります。Google以外の提携サイトの検索結果にも広告を出す仕組みで、初期設定では有効になっています。
ここが有効だと、クリック単価が不自然に安くなり、コンバージョン数が不自然に多くなることがあります。 報告書の見た目は良くなります。しかし、そこから実際の問い合わせや受任につながっているケースは多くありません。
次の状態に心当たりがあれば、確認してください。
- クリック単価が、以前より明らかに安くなった
- コンバージョン数が急に増えた
- それなのに、受任件数も面談件数も増えていない
代理店に「検索パートナーを除いた場合の数字」を出してもらえば、すぐ分かります。分けて出せない、という回答なら、その代理店は配信先ごとの成果を見ずに運用しています。
なお、検索パートナーが常に悪いわけではありません。問題は、成果が混ざったまま報告されると判断できなくなることです。分けて見たうえで、効いているなら残せばよいだけです。
報告の頻度と長さ
月次で十分です。週次報告を求めると、誤差でしかない変動に対応を求めることになり、運用が安定しません。
報告書の分量も、判断には関係ありません。30ページの報告書より、上の三つが書かれた1枚のほうが役に立ちます。
判断を変えるべきタイミング
三つの数字を並べて、次のどれかに当てはまったら、出稿量ではなく中身を見直す段階です。
- 受任件数が6か月連続で横ばい、または減っている
- 受任1件あたりの広告費が、平均受任額の4割に近づいている
- 受任に至らない問い合わせだけが増えている
このとき広告費を増やしても、同じ比率で無駄が増えるだけです。誰に出しているかを変える段階です。