サイト設計
法律事務所の相談フォームで、聞くべき項目と聞いてはいけない項目
公開日:2026年10月1日
CONCLUSION
相談フォームの必須項目は、氏名、連絡先、相談内容の三つにとどめる。相手方の氏名や事案の詳細は、折り返しの電話で聞く。項目を増やすほど送信されなくなり、詳細に踏み込むほど守秘の面でも不要なリスクを抱える。
相談フォームは、サイトの中で最も数字に直結する場所です。ここで送信されなければ、それまでの広告費もページ制作費も意味を持ちません。にもかかわらず、フォームの項目は「あとで聞くのが面倒だから」という事務所側の都合で増えていく傾向があります。
なぜ項目が増えると送信されなくなるのか
相談者がフォームを開く時点では、まだ依頼を決めていません。複数の事務所を見比べている段階です。この段階で入力欄が多いと、相談者は「依頼してから書けばいい」と判断して、別の事務所に移ります。
とくに負担が大きいのは、自由記述の長い欄です。「相談内容を詳しくご記入ください」という大きな欄があると、何をどこまで書けばよいか分からず、そこで手が止まります。相談者の多くは、自分の状況を文章にまとめられる状態ではありません。だから相談に来るのです。
フォームの目的は事案を聞き取ることではなく、折り返しの電話に辿り着くことです。事案の詳細は、電話で弁護士か事務局が聞いたほうが、正確で、速く、相談者の負担も小さくなります。
必須項目は、氏名、連絡先、相談内容の三つにとどめます。これ以外の項目は基本的に入力されにくく、削れるものは削ったほうが送信数は上がります。項目の数だけでなく、入力のしやすさも効きます。入力欄が小さく、スマートフォンで打ちやすく、エラーの表示が分かりやすいフォームは、それだけで送信率が上がります。
聞くべき三つの項目
最初の一通で必要なのは、次の三つです。
一つ目は、氏名と折り返しの連絡先です。 電話番号を必須にします。メールアドレスだけだと、返信が迷惑メールに入って届かないことがあります。あわせて、連絡してよい時間帯を選択式で聞いてください。仕事中に事務所から電話がかかると困る相談者は多く、時間帯を聞いておくだけで、折り返しがつながる率が上がります。折り返しの速さが受任に影響することは、別の記事で書く予定です。
二つ目は、相談内容です。 分野を選択式で選ばせ、一言だけ書ける短い欄を添えます。相続、離婚、債務整理といった分野が分かれば、事務局が誰に回すかを決められます。「その他」の選択肢は必ず残し、詳しい経緯は書かせないでください。
三つ目は、相手方の氏名の扱いです。 利益相反の確認に必要ですが、フォームでは聞きません。相手方の氏名は、折り返しの電話で聞くのを基本にしてください。初回の問い合わせの段階では、まだ事務所への信用ができていません。そこで相手方の氏名まで書かせると、送信をためらわせます。電話で話してから相手方を聞き、面談の設定前に利益相反を確認する流れが好ましく、相談者が初回の電話で自分から話してくれれば理想です。
- 1フォーム送信連絡先・連絡可能な時間帯・分野の三つだけ
- 2折り返しの電話事案の概要、相手方の氏名、どこで事務所を知ったか
- 3利益相反の確認相手方の氏名が分かった時点で、面談を設定する前に行う
- 4面談の日程調整必要な持ち物は、この時点で伝える
どこで事務所を知ったかも、折り返しの電話で聞けます。フォームに「当事務所をお知りになったきっかけ」を置く事務所もありますが、必須にすると送信数が落ちるうえ、答えが「インターネット」に偏って判断に使えません。電話で一言聞いたほうが、受任単価を出すための経路の記録として精度が上がります。
聞いてはいけない項目
次の項目は、フォームには置かないでください。
事案の詳細な経緯。 理由は二つあります。一つは前述のとおり、送信を妨げるからです。もう一つは、相談者が詳細を書いた文面が、事務所のメールサーバーとフォームの管理画面に残るからです。事務所が受任しなかった場合でも、他人の秘密を含む文書が手元に残ります。フォームの文面は、相談者の同意なく外部に出さないという前提で、保管の期間と閲覧できる人を決めておく必要があります。
生年月日・住所・勤務先。 受任が決まってから聞けば足ります。面談前にこれらを聞く理由が事務所側にありません。
収入や資産の額。 とくに債務整理や離婚の分野で聞きたくなる項目ですが、フォームで答えさせると、答えを書くこと自体に抵抗を感じる人が出ます。費用の見通しを立てるために必要なら、面談の場で聞いてください。
メールアドレスと電話番号の両方を必須にすること。 どちらか一方で足ります。電話を必須にして、メールは任意にするのが標準です。
最初のフォームで聞く
- 電話番号(必須)
- 連絡してよい時間帯(選択式)
- 相談の分野(選択式)
- 氏名(必須)
- 相談内容(短い欄)
電話か面談で聞く
- 事案の詳細な経緯
- 相手方の氏名
- 生年月日・住所・勤務先
- 収入・資産の額
- 事務所を知った経路
自動返信メールの扱い
フォーム送信後に自動返信メールを送る場合は、文面に一点だけ注意してください。相談内容の控えを本文に入れないこと。 相談者が家族と共用しているメールアドレスを使っていることがあり、第三者に内容を見られる可能性があるためです。
自動返信には、受け付けたこと、折り返しの予定時刻、事務所の電話番号の三つだけを書きます。折り返しの予定は具体的に書き、そのとおりに守ってください。原則は当日に折り返すと書くのが望ましいところです。事務所の体制上それが難しければ、少なくとも2営業日以内と約束してください。書いた時間を過ぎると、相談者は別の事務所に電話をかけます。
項目を決める基準
項目を一つ足すかどうか迷ったときは、次の問いで判断してください。
- その情報は、折り返しの電話の前に必要か。電話で聞けるなら、フォームには置かない
- その情報がなくて、受任できない案件が出るか。利益相反の確認のように、出るものだけ残す
- 相談者がその欄の前で手を止めないか。迷いそうな欄は任意にするか、削る
すでにフォームがある事務所は、入力欄ごとの離脱率を確認してください。フォーム解析のツールを入れていなければ、まず送信ボタンの到達数と、フォームページの表示数を並べるだけで構いません。この比率が低いなら、項目の見直しが先です。広告費を足すより効きます。
フォームの項目数は、サイトの分野ページの分け方や費用の載せ方と並んで、問い合わせの数ではなく質を決めます。問い合わせ数を目標にしてはいけないのと同じ理由で、フォームも、送信数を最大にする設計と、受任に至る相談を最大にする設計は一致しません。電話番号を必須にすると送信数は減りますが、折り返しがつながる相談だけが残ります。