サイト設計

法律事務所のサイトに、費用を載せるべきか

公開日:2026年9月21日

CONCLUSION

費用は載せる。論点は載せるかどうかではなく、読んで自分の額が見当つくかどうか。相談料・着手金の算定方法・報酬金の割合・実費の目安の4つを幅と条件つきで書く。効果はアクセス解析では測れないので、面談で「サイトの費用をご覧になりましたか」と聞いて確かめる。

「費用は事案によって変わるので、サイトには載せていません」

よくうかがう考え方です。そして、費用が事案によって変わるのは事実です。

ただ、相談者の側から見ると話が変わります。問い合わせをためらう理由の上位に、常に費用があります。 いくらかかるか分からないものに、名前と連絡先を渡して問い合わせるのは、相当なハードルです。

載せない場合に何が起きるか

問い合わせが減るのは想像がつくと思います。問題は、減り方に偏りがあることです。

費用が分からないまま問い合わせてくる人は、次のどちらかに寄ります。

  • とにかく急いでいる人 — 費用を気にする余裕がない
  • 費用がかからないと思っている人 — 無料だと考えている、あるいは相手方に請求できると思っている

前者は受任につながります。後者は、面談で費用を説明した時点で終わります。その面談時間は費用として消えています。

一方、費用を調べたうえで「この範囲なら依頼できる」と判断した人は、そもそも問い合わせてきません。他の事務所のサイトに載っているからです。

つまり、載せないことで検討が進んでいる層だけが抜けるという状態になります。

費用を載せない場合と、載せた場合

載せない

  • 問い合わせの総数は多くなることがある
  • 費用を誤解したままの相談が混ざる
  • 面談で費用を説明して終わる件が増える
  • 検討が進んでいる層は他事務所へ流れる

載せる

  • 問い合わせの総数は減ることがある
  • 費用を理解したうえで来る
  • 面談が依頼の前提の話から始められる
  • 費用が合わない層は最初から来ない

載せると問い合わせ件数は減ることがあります。ただし減るのは受任に至らない相談です。件数ではなく受任で見てください。

何を載せるか

総額を載せる必要はありません。載せるのは算定の考え方です。次の4つがあれば、相談者は自分のケースの概算を立てられます。

掲載する4項目
  1. 1
    相談料初回の有無、時間あたりの金額。無料なら回数の上限も
  2. 2
    着手金の算定方法定額か、請求額に対する割合か。下限額があるならその額も
  3. 3
    報酬金の割合経済的利益に対する割合。成功の定義が分かれる分野は、何をもって成功とするかも
  4. 4
    実費の目安印紙、郵券、交通費、鑑定費用など。金額より「別途かかる」と明示することが重要

このうち実費が抜けている事務所が多い印象があります。着手金と報酬金だけ書いてあると、相談者は総額をその2つだけで見積もります。面談でずれが出ます。

「◯円〜」の書き方

「着手金11万円〜」という書き方は一般的ですが、扱いには注意が必要です。

下限だけを示すと、相談者はその額を基準に考えます。実際には請求額に応じて上がる場合、面談で説明することになります。その説明が、金額を釣り上げられたという印象になることがあります。

避けるには、下限とあわせて上がる条件を書くことです。

  • 「着手金11万円〜。請求額が◯◯円を超える場合は、超過分の◯%を加算します」
  • 「着手金11万円〜33万円。ご相談内容によって変わります」

どちらでも構いません。下限だけを単独で置かないことが重要です。 業務広告規程でも、誤認を生じさせる表示は避けるべきとされています。

安売り競争を避けたい場合

「金額を載せると、安いところと比べられる」という懸念は理解できます。実際、金額だけを並べれば安いほうが選ばれます。

対処は、金額を隠すことではなく、含まれる範囲を明記することです。

  • 着手金に何が含まれるか(書面作成、交渉、出廷の回数)
  • どこからが追加費用か
  • 誰が担当するか

同じ「着手金22万円」でも、含まれる範囲が違えば比較の前提が変わります。範囲を書いていない事務所とは、そもそも比較されません。

なお、費用の安さを前面に出す打ち出し方は、当社としてはお勧めしていません。価格で選ばれた相談者は、価格で離れます。

分野によって幅が大きい場合

取扱分野が複数あり、分野ごとに費用体系が違う事務所は、分野ごとに書いてください。 事務所全体で一つの表にすると、どの分野にも当てはまらない表になります。

ページを分ける必要はありません。分野ページは1枚にまとめるのが原則で、費用も同じ1枚の中に分野ごとの見出しを立てれば足ります。

更新を止めないこと

費用ページで最も多い事故は、改定したのにサイトが古いままという状態です。

相談者はサイトの金額を前提に問い合わせてきます。面談で違う金額を伝えることになれば、信用を落とします。

費用を改定したら、その日のうちにサイトも直してください。 改定が年に一度しかないからこそ、忘れます。改定の手順書に「サイトの費用ページを更新する」の一行を入れておくのが確実です。

判断の基準

載せるかどうかで迷っている場合、次の順で考えてください。

  1. いま、費用に関する問い合わせが月に何件あるか。 多いなら、それは載せていないことのコストです
  2. 面談まで進んで費用が理由で終わる件が、月に何件あるか。 この時間が最も高くつきます
  3. 競合3事務所のサイトを見る。 載せている事務所が多いなら、載せないこと自体が選ばれない理由になります

3つとも確認したうえで載せないと決めたなら、それは判断です。確認せずに載せていないなら、一度数えてみてください。

当社としては、費用ページは必須という立場です。載せるかどうかで迷う段階はすでに過ぎていて、いかに分かりやすく載せるかが論点だと考えています。

効果は、アクセス解析では測れない

載せたあと、数字で効果を確かめようとすると行き詰まります。

費用を読んで納得した人は、そのまま問い合わせてきます。しかし**「費用ページを見たから問い合わせた」とは、どこにも記録されません。** 費用ページの滞在時間が長いことが、良い兆候なのか、分かりにくくて読み返しているのか、区別もつきません。

確かめる方法は一つです。面談で聞いてください。

「当事務所の費用については、サイトをご覧になりましたか」と一言尋ねる。それだけです。印刷して持参される方もいます。持ってきた紙のどこに線が引かれているかまで分かります。

これが唯一の手がかりです。 数字が動くのを月単位で待つより、次の面談3件で聞いてみるほうが早く、得られる情報も多くなります。

聞いたときに返ってくる答えで、直すべき場所が決まります。

  • 「見ましたが、自分の場合いくらか分かりませんでした」 → 算定方法が抽象的すぎる
  • 「着手金は分かりましたが、他に何がかかるのか」 → 実費の記載が足りない
  • 「見ていません」が続く → そもそも費用ページに導線がない

つまり費用ページの問題は、載せるかどうかではなく、読んで自分の額が見当つくかどうかです。 載せた時点で終わりにせず、面談での反応をもとに書き直してください。

なお、受任件数と受任率は並行して見ておいてください。件数が減って受任が変わらないなら、消えたのは受任に至らない相談です。それは改善です。判断の仕方は受任単価の記事にまとめています。

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