AI検索

AIは「弁護士事務所」と言われるまで、半分しか勧めない

公開日:2026年10月2日

CONCLUSION

相談先を限定しない自然な聞き方では、民間の弁護士事務所が紹介されるのは44%にとどまる。31%は法テラス・弁護士会という公的窓口で、他士業は17%。AIが根拠にしているのは個別事務所のサイトではなくポータルであり、口コミ評点と推薦は相関していない。

弁護士を探している人がAI検索に相談したとき、どの事務所が勧められるのか。この問いに答えるデータは、どこにも存在しません。AIの回答は保存されておらず、後から遡って調べることができないからです。

弊社は2026年10月1日から、全国11都市・5分野・190通りの質問を、毎月2回同じ条件で投げ続けて記録しています。本稿は、その初回の記録から分かったことの報告です。


調査の方法

項目 内容
実施日時 2026年10月1日 午前8時(日本時間)
対象都市 札幌・仙台・さいたま・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡・東京
対象分野 相続・離婚・交通事故・労災・債務整理
質問数 190件
取得方法 Google AI Mode / AI Overview(SERP API経由・非ログイン状態)

質問は性質の異なる5種類を用意しました。本稿で中心になるのは次の2つです。

A「◎◎市で△△を相談するにはどこがおすすめ?」(55件) 専門家の種類を指定しない、ごく自然な聞き方です。

B「◎◎市で△△を相談するならどの弁護士事務所がおすすめ?」(55件) 弁護士事務所に限定した聞き方です。

AとBは、都市も分野も完全に同じ組み合わせです。違うのは「弁護士事務所」という一語が入っているかどうかだけです。


聞き方を変えるだけで、弁護士かそれ以外のどちらを紹介するかが大きく変わる

聞き方による紹介先の違い(2026年10月1日・11都市×5分野)

A「どこがおすすめ?」

  • 民間の弁護士事務所 44%
  • 公的な法律相談窓口 31%
  • 他士業 17%
  • その他の団体 8%

B「どの弁護士事務所がおすすめ?」

  • 民間の弁護士事務所 95%
  • 公的な法律相談窓口 3%
  • 他士業 2%
  • その他の団体 0%

都市と分野の組み合わせは完全に同じ。違うのは「弁護士事務所」という一語だけ

A(限定しない) B(弁護士事務所を指定)
推薦された事業者 93件 135件
民間の弁護士事務所 44% 95%
公的な法律相談窓口(法テラス・弁護士会) 31% 3%
他士業(司法書士・税理士・行政書士) 17% 2%
その他の団体 8% 0%

「弁護士事務所」と付けるだけで、44%が95%と大幅に上がります。もちろん指定をしているので分かりきったことではありますが、逆に対象を指定しない限り、弁護士に相談すべき内容でも他士業を推薦することが有り得る、という示唆になります。

減った分の行き先は、他士業ではなく、他士業は17%で法テラスと弁護士会が31%を占めています。法テラスも弁護士会も弁護士ですが、民間ではなく公的な窓口である点が違います。

AIは「まず無料で相談したいなら法テラス」「中立な窓口なら弁護士会」と案内し、そのあとに民間の事務所を並べる傾向があるようです。

相談先を限定しない聞き方で多く紹介されているのは、他士業ではなく公的な窓口でした。他士業が出てきたのは、相続で3都市、債務整理で2都市と多くはなく、司法書士や税理士に顧客を奪われているという話ではないことがわかりました。

相談者が最初に打つのはAのパターンが多いはずです。相続で困っている人は「相続に強い弁護士」ではなく、「相続を誰に相談すればいいか」を探しています。その段階では、紹介の半分以上が民間の事務所以外です。


単語を並べて検索すると、AIは4割しか答えない

質問の形式によって、AIが回答を生成する確率そのものが変わりました。

質問の形式 AIが回答した割合
「相続 弁護士 福岡」(検索エンジン的な単語の羅列) 40%
「福岡で相続を相談するにはどこがおすすめ?」(会話型) 100%
「福岡で相続を相談するならどの弁護士事務所がおすすめ?」 100%
長文の状況相談(「父が亡くなり、兄が遺産を教えてくれません」等) 100%

単語を並べる従来型の検索では、AIの要約は半分以上のケースで表示されませんでした。人に話しかけるような聞き方ではほぼAIが答えるようです。これは対策の優先順位に関わります。従来のキーワード検索を起点に発想すると、AIがそもそも答えていない領域を相手にしてしまう可能性があります。


分野によって、AIが答えるかどうかが違う

単語型の検索(「相続 弁護士 ◎◎」形式)について、11都市での出現率を分野別に集計しました。

分野 AIが回答した都市数
相続 6 / 11
交通事故 5 / 11
離婚 4 / 11
債務整理 4 / 11
労災 3 / 11

同じ分野でも都市によって出る・出ないが分かれ、全都市で安定して出た分野はありませんでした。AIがどの程度答えるか自体が、分野と地域によって異なります。

AIの回答は同じ質問でも必ず同じ回答が返ってくるわけでは有りません。この数字は1回の観測値であり、傾向として確定させるには継続した記録が必要です。弊社が月2回測っている理由がこれです。


AIはポータルサイトを根拠にして答える傾向が強い

AIが回答の根拠として引用した情報源を、運営元ごとに集計しました。

運営元 引用された回数
新聞社系の法律メディア(4媒体) 99回
比較サイト運営企業(6媒体) 76回
弁護士ポータル大手(2媒体) 36回

上位3グループで211回、全引用の38%という結果になりました。いずれも法律事務所ではなく、メディアと比較サイトの運営企業です。個別事務所のサイトも引用されますが、多くは1〜2回と極少数にとどまっています。(推薦された事業者のGoogleプロフィールへのリンクは、媒体ではないため除いています)

この構造は、弁護士事務所にとって二重の意味を持ちます。ポータルへの掲載がAI経由の露出につながる一方で、AIの回答の入口をポータル運営企業が握っていることでもあります。


一部の全国展開している事務所が複数都市で繰り返し出現

推薦された事業者を、支店を同じ事務所としてまとめ直すと、3都市以上に登場したのは7事務所でした。

登場した都市数 事務所数
7都市 1事務所
6都市 1事務所
5都市 3事務所
4都市 1事務所
3都市 1事務所

最も多く登場した事務所は11都市のうち7都市で推薦され、相続・交通事故・債務整理と複数分野にまたがっていました。

一方で、都市を指定した質問から観測された112事務所のうち99事務所(88%)は1都市にしか登場していません。複数の都市で出てくるのは少数の全国展開事務所で、残りは地元の事務所です。

地域で集客する事務所にとっては、同じ都市・同じ分野で誰と並んで紹介されているかが問題になります。1つの質問でAIが挙げるのは平均1.7件、弁護士事務所に限定した聞き方でも平均2.5件です。


口コミの評点とAIによる推薦は相関していない

今回のデータには、推薦された事業者のGoogle評点が付いていました。200件分の分布です。

推薦された事業者のGoogle評点の分布(n=200)
★4.5以上
★4.0〜4.4
★3.5〜3.9
★3.5未満
  • ★4.5以上44%
  • ★4.0〜4.420%
  • ★3.5〜3.913%
  • ★3.5未満22%

中央値は★4.4ですが、5件に1件以上が★3.5未満で、最低は★1.4でした。

口コミ評点はAIに推薦される条件ではありません。評点が低くても推薦される事務所があり、高評価でも登場しない事務所があります。何が条件なのかは、まだ分かっていません。


弁護士事務所にとって、何を意味するか

今回の190件から言えることを整理します。

1. 競合は弁護士だけではない 相談先を限定しない聞き方では、民間事務所の取り分は44%です。残りの31%は法テラス・弁護士会という公的窓口に向かっています。同じ分野の弁護士だけを競合と見る前提が、AI検索では成立していません。

2. 従来のキーワードを起点にすると、対象を見誤る 単語型の検索ではAIは4割しか答えず、会話型では100%答えます。対策を考える順番は、おそらく逆になっています。

3. 自社サイトの前に、ポータルがいる AIが参照しているのはポータルサイトです。掲載の有無がAI経由の露出を左右している可能性があります。

4. 口コミを磨いても、それだけでは入口に立てない 評点とAI推薦は一致していません。評点対策とAI対策は別の仕事です。


この調査の限界

数字を使う前に、限界を明示しておきます。

  • 非ログイン状態・指定地域・特定日時の取得結果です。実際の利用者が自分の端末で見る回答と同一ではありません
  • AIの回答は同じ質問でも揺らぎます。本稿の数値は2026年10月1日時点の1回の観測であり、傾向の確定には継続した記録が必要です
  • 取得はSERP API経由です。API提供元によって取得できる情報量が異なるため、提供元を変えた前後のデータは比較できません。弊社は10月1日を時系列の起点に置いています
  • 個別の事務所名は本稿では公開していません

継続して記録しています

弊社は毎月1日と16日に、同じ190件の観測を続けています。最新の数値はAI検索 定点観測(弁護士分野)で更新しています。

過去のAI回答は誰も保存していないため、このデータは記録を始めた日からしか作れません。半年後・1年後に「AI検索で何が起きたか」を語れるのは、今から記録している者だけです。

次回以降は、月ごとの変化を報告していく予定です。

  • 推薦される事務所が入れ替わっているか
  • 他士業や公的窓口の比率が上がっているか下がっているか
  • ポータルの寡占が進んでいるか

ご自身の事務所が、どの都市・どの分野でAIにどう扱われているかをお知りになりたい方は、お問い合わせください。観測データからお答えできます。

調査日: 2026年10月1日 / 対象: 全国11都市・5分野・190クエリ

初回相談は無料